認定機器:ばね・ばね装置の一覧

認定機器
21

初代クラウン3枚板ばね

製造年:1955

本ばねは自動車技術会のばね技術委員会による研究成果を基に乗用車用に開発されたもので、軽量化は元より板間摩擦力を小さくすることで、振動吸収の追従性を向上し小さな振動に対しても十分な減衰効果を発揮させ、乗り心地を改善している。この背景には、正確な重ね板ばねの応力計算法の採用とストレスショットピーニングの適用による疲労強度向上の二つの技術開発がある。本開発以降、枚数が少なく、応力分布は均一かつショットピーニングにより設計応力を高くするという重ね板ばねの軽量化の基本的手法が定着化したことで、本ばねは歴史的並びに技術史的価値が高い。

認定機器
22

スバル360 トーションバー

製造年:1958

軽自動車用懸架ばねには省スペースと軽量化及び経済性が強く求められるが、本ばねは各種ばねの中で最もこれらの要求にかない、弾性エネルギーの吸収効率も高いばねとして国産初の量産軽自動車に採用されたものである。その製造には両端つかみ部のセレーションを冷間転造して量産化と強度の向上を図ると共に 当時新技術であったショットピーニングによる疲労強度向上とセッチングによるへたり防止も施してスバルクッションと呼ばれる革命的なサスペンションを実現した。これら新加工技術の確立と日本のモータリゼーション開始に果たした本ばねの意義は技術史的並びに歴史的に高く評価される。

認定機器
28

電縫管製 中空スタビライザ

製造年:1979

スタビライザは、旋回時に自動車の車体の傾きを抑え、外輪の負荷を低減するばねで、その中空化は中実材に対し30~50%もの軽量化が図れることから 燃費向上に貢献する。中空化は当初シームレス管でも検討されたが、シーム位置を管理すれば電縫管の方が疲労に対する信頼性が高いことから、本ばねは2代目日産バイオレットに採用された。その後、熱処理や新鋼種による高強度化 通電加熱法の開発など次々に技術革新が進められ、自動車の燃費向上への要求が高まった。1980年代の中空スタビライザ生産急拡大の礎を築いた点で本ばねは歴史的・技術史的価値が高い。

認定機器
29

斜張橋耐震固定装置用皿ばね

製造年:1984

本州と四国を道路と鉄道で結ぶ本州四国連絡橋児島・坂出ルート中の長大斜張橋(櫃石島橋と岩黒島橋)には重量が大きい橋桁の地震による振動を抑えるため 多数の皿ばねを用いた弾性固定装置が設置されている。本装置は直径700mm 厚さ32mm 重量72 kg の巨大な皿ばね340 枚からなるスプリングシュー(ばね定数3000 tf/m/ 基)4基/橋で構成され 2橋で2720 枚に及ぶ皿ばねの製作とスプリングシューの性能と安全性を確認した全数荷重試験は未曽有の技術課題を克服して達成されたものである。この耐震固定装置は世界初のみならず30年以上にわたり本州四国間の大動脈を支えており ここで採用された皿ばねは歴史的かつ技術史的価値が高い。

認定機器
31

オリエンタルロック一式

製造年:18世紀~20世紀初頭

錠前には一般にばねが使用されているが、日本の古典的な錠前である和錠をはじめ、アジア・アフリカ産の古い錠前のロック機構には鍛造された薄板ばねを用いる特徴がある。特に和錠においては錠前鍛冶により複雑なからくり錠へと独自の発展を遂げている。氏は和錠を中心に世界の錠前700点余りを収集・展示しており、本遺産はその中から代表的な錠前30 点を選んだものである。これらは工業化以前のばね技術を伝える貴重な歴史的遺産である。

認定機器
34

古式銃(火縄式2丁・鋼輪式,空気式各1丁)

製造年:江戸時代(文化文政期~幕末)

古式銃の原型又は類似型は欧州に見られるが日本では鉄砲鍛冶の手により特異の発展を遂げている。火縄式銃は天文12 年(1543)に伝来、その後各地で生産され歴史上大きな影響を与えた。燧石着火式の鋼輪式銃は独自の発想で文化9年(1812)に、そして空気式銃は実戦に供せるものが文政2 年(1819)に製作された。銃は銃身・銃床(空気銃は蓄気筒)・機関部(カラクリ)で構成され カラクリには引金と連動する駆動源に各種のばね(弾き金)を用いている。そこから往時の材質・加工状況・駆動機構などが窺える本遺産は研究のために氏が調査・分析した千丁余に及ぶものの中から代表的な古式銃4 丁を選んだものである。これらは工業化以前のばね技術を伝える貴重な歴史的遺産である。

認定機器
37

板ばね式ホースクランプ

製造年:1973年量産開始

本製品は自動車向け板ばね式ホースクランプとして、1973年の量産開始以来、同一基本形状で量産され作業性改善のため、ねじ留め式からホルダー式 ワンタッチ式へと変化しながらも現在なお幅広く使われ続けている。本製品は、円筒帯板の開口部と反対側付近に三角形状の孔を設けることにより装着時および使用中に円筒の径が変化しても真円形を保ち、ホースの均等締付けを可能にした画期的なものである。シンプルな構造ながら独創的発想、さらに自動車業界以外にも多くの生産現場へと普及したことからも技術史的価値が高い。

認定機器
38

からくり人形(弓曳き童子・文字書き人形)

製造年:江戸時代末期(天保~嘉永)

本人形の動力源には からくり人形として代表的な「茶運び人形」などに使われていた鯨のひげに替わり南蛮渡来の西洋時計を参考にした手延べ加工の真鍮製ぜんまいばねが使われており、さざえ車・カム・繰り糸を組み合せた構造で、精緻かつ柔らかな動きを実現している。本作品は、からくり人形の最高傑作との評価を得ており 今日の機械・ロボット機構に繋がる技術であるとともに、工業化以前のばね技術を伝える貴重な歴史的遺産である。

認定機器
40

初期のフィールド競技用義足一式 及び 国産板ばね KATANAシリーズ3点

製造年:義足;2000年シドニーパラリンピック開催時  板ばね;2005~2016年(開発・改良)

日本人の小柄な体型・走りに適した軽くて堅牢かつ蓄積エネルギーとその利用効率の高い板ばね形状と構造の開発を目的とし、2006年のCFRP製板ばね国産化後、義足走行の動作解析にもとづき板ばねの積層繊維配向を変えてばね特性の改良を重ね、また接地部を土踏まず状にアーチ型にして接地位置の安定化をはかり製品化したものである。これらはフィールド競技用義足の国産化とその板ばね改良の経緯を辿り、スポーツ界へのばね機能製品貢献の一端を知る上で社会的・技術史的に貴重なものと考えられる。