Tech322c06
技術者の心得 : 品質管理に関する10ヵ条(その6)
品質管理は自分が日常行っている健康維持と同じである
西畑三樹男 森川 愼
象の尻尾になるな
身体障害者には全く偏見は持っていませんが、話として大変分かりやすいので、
盲目と言う言葉を使わせてもらう。「群盲象を撫ず」と言う話がある。盲目の人
が三人、象の回りに集まって、象に触って見た。三人の感想は、
- 耳に触った人は→大きな団扇のようだと主張した。
- 足に触った人は→臼のようだと主張した。
- 尻尾に触った人は→ロープのように細くて長いもんだと主張した。
三人がそれぞれ主張した象は確かにその部分としては間違っていないが、
象そのものではない。全体を見ることのできる健常者であれば、象の全
体が分かり、決して団扇のようでも、臼のようでも、ロープのように長い
ものでもないことはすぐ分かる。このように、一部分だけを見て全体を理
解したつもりになると大きな間違いを起こす危険性があると言うことの戒めの話である。
実は皆さんの作っている製品の不良さについても同じことが言えると思う。何か
不良が発生したとき、本当に色々の角度からすべての事実を調べて、真の原因を
突き止めたうえで、解析、対策をしているか。それなら良いが、不良の現象を一
寸見て、「あ!これはどこが原因だ」などと勝手に決めつけていませんか。も
しそうだとすれば、象の部分に触って象を主張した盲目の人と何ら変わりない。
しかし、盲目の人でも象の頭、鼻、お尻にも、体全体に触って見れば、健常者と
同じように象全体が見えてくるはずである。
QCサークルで良く使う特性要因図などは、この象の尻尾に陥らないための道
具なのである。問題が発生したら特性要因図などを頭の中に描いて見て、すべて
の事実を把握したうえで、漏れのない原因の調査、対策を進めるように心掛けよう
。そうすれば再発は必ず防止できる。これをやらずに同じ問題をくり返し発生させ
ている人を時々見かける。問題が出たら、原因を即断せず“象の尻尾になるな”を合
言葉にして、漏れのない完璧な問題解決をするように心掛けよう。