犯罪が起こり現場で犯人が捕らえられなかったとき、警察は最初になにをやるでしょうか。
現場検証をしその結果に基づき聞き込み調査などをやるが、一番犯人逮捕に役立つのは、
警察内部に保管されている前科もののリストである。同じような手口の犯罪が今までにな
かったかとか、指紋や遺留品の中に前科もののリストに結び付くようなものはないかなど、
綿密に調査する。すなわち前科ものは真っ先に疑われるのである。同じことが我々のような
部品メーカの品質トラブルのときにも言えると思う。
そこで理解し易いように私がホンダ技研にいた当時、実際に経験した悪い例としてS社の
トラブル事例を紹介してみよう。
ちょうど15年くらい前になるが、S社のある部品が市場でクレームを多発させたことがあ
る。市場から返却されてくるクレーム品をS社に送って解析させたところ“異常なし”で返
却されてきた。その返却されたクレーム品を実車に取付けて再現テストをして見ると、確か
に異常はない。ところが市場からは続けてクレーム品がどんどん返ってくる。そこで今度は
自分達で徹底的に調べて見たところなんとS社は、基板の半田不良(半田クラック)になった
箇所を修正して異常なしと言って返却していた。この部品は不良になるとエンジンが止まっ
てしまう大変重要な部分である。サービスの第一線ではこの問題が多発したため、お客様に
も迷惑をかけるので、エンジンの具合の悪い車が来店すると、S社の部品が悪くなくても交換
するという事態となってしまった。このお蔭でS社は大変信用を失墜すると同時に大きなクレー
ム費用の負担を負うことになり、また後々まで問題が出るとこのS社の対応はウタガイの目で見
られるというようになって大変評判を落とした。この例はまさに“前科ものは最初に疑われる”
の良い見本だと思う。
一般的に得意先へ納入した製品でトラブルが発生した場合、担当者も人間ですからよく次
のような判断をする。