毎日まいにち流れている製品には性能にも外観にもバラツキがある。
その許容限度は、性能についてはスペックで、寸法については公差で、外観に
ついては限度見本などでその許容範囲が得意先との間で取交わされている。
これらの約束した品質を安定して継続的に供給するために、我々は最適の
4M(人、方法、機械、材料)を設定してそれを標準化し、得意先の承認を得
たうえで100%保証できる製品を生産し供給している。したがって供給先で
は受入れ検査は一般には管理抜取り検査とする場合が多く、全数検査は行っていない。
ところが納入した製品に問題が発生した場合、普通であれば適切な対策を取る
ことによって即刻再発防止が図られれば、一件落着で済む。しかし、もし続けて
同じ不良を繰返すようなことがあると信頼感を失い、どうしても疑いの目で見ら
れるようになってしまう。その結果、今まで良いとされていたところまで寸法を
測られたり、外観をより厳しく見られたりするために、商品として問題のないと
ころまで不良にされてしまうことがある(アバタもエクボではなくクレータ位に
見えてくるものである)。このようにして一旦不良メーカの烙印を押されてしまう
と、そのメーカ“バッカリ”厳しい目で見られるようになってしまう。
私がホンダにいた当時、品質問題で社長から大目玉をくったり、市場で大きな
問題が発生して苦労したことなどあるが、そんなとき、それからはどうしてもそ
れバッカリを特に注意して検査をするということがあった。私達はこれを称して
“バッカリ検査”と言っていた。一旦不良メーカの烙印を押されてしまうと、よ
り厳しい目で見られるようになってしまい問題でないところまで疑われるようになってしまう。
・あのメーカがまた不良を出したか。・あのメーカは危ないよ。・あのメーカはまた不良を出すだろう。
・だから注意しろ、全検だ。と言うように、このようなバッカリ検査から抜け出すには
一にも、二にも例え小さな問題でも万一問題が発生したら、
・即刻事実を把握する。・真の原因を調べる。・適切な対策をする。・再発防止を図る。
・他の部品や設計にも反映する。を実行して再発防止ができれば、バッカリ検査魔の毒牙にかかることはない。