技術者の心得 : 製造技術に関する10ヵ条(その7)
物作りほど魅力と満足度を同時に味わえるものはない
西畑三樹男 森川 愼
ドブに落ちないように気をつけよう
- ドブに落ちて、そのままでいたら溺れて死んでしまう。
- ドブに落ちたら、すぐに這いだすこと。
- もっと大事なことは、ドブに落ちないようにすること。
よく品質トラブルや設備故障が発生したときなどに、良いアイデアを出したり、
積極的に行動して素早く問題を解決してくれる人がいる。すると皆は、彼はなかな
か良くやる優秀な奴だと評価する。確かに何もしないでドブの中に落ちたまま溺れ
死ぬ人より優秀だが、しかし本当の意味で優秀な人と言えるだろうか。
昔、巨人の名ショートで、後に西武の監督や、解説者などをされた広岡さん
が言われた話の中で、逆シングルやスライディングキャッチで格好良く捕球
するより、予め打者の癖やピッチャーのコースによって自分の守備位置を決め、
難しい球を体の正面で正確に捕られるほうが名選手だ、と言われたことを覚えている。
我々の仕事でも同じことが言えると思う。問題が出てしまったら素早く格好
良く解決することも大事なことではあるが、もう一歩進んでドブに落ちない努力を
してくれる人の方が本当に企業が求める優秀な人間だと思う。そこでドブに落ちない
(問題を発生させない)ようにするためには、
- 製品の開発時点に設計まで逆上って、作り易い、品質を守り易い、意見をどんどん出して、図面に反映すること。
- 設備や、治具や、検具は作る前に現場の意見を十分入れること。
- 作業標準や基準書を量産前に完備し、作業者の教育訓練を良くやること。
- 設備の点検、メンテ、職場の5Sなどを守ること。
- 不良発生状況を把握して対策を常に心掛けること。
- 小集団活動や改善を行い、職場の活性化を心掛けること。
Etc. 等の問題を出さないために考えられる計画や訓練を、事前に行うことである。