技術者の心得 : 製造技術に関する10ヵ条(その5)
物作りほど魅力と満足度を同時に味わえるものはない
西畑三樹男 森川 愼
製品を一つ売って“何ぼか”が問題だ
ゴルフでは“アガッテ何ぼか”という言葉を良く使う。これはティショットばかり飛ばしても、
あがってボギーではニギリは負けですよ、ティショットはそれほど飛ばなくとも、二打目を打ち
易いところへ正確に飛ばすのも大事な戦法で、あがってパーなら勝負はいただきですよ、と言うことである。
これは私たちの仕事に置きかえれば、“製品を一個売り上げて(あがって)何ぼか”が勝負である。
金型や自動機をいくら良いものを造ったつもりでも、でき上がった製品の品質が良くて安くで
きなければ“パー”にはならない。逆に故障ばかりしたり、使いにくかったり、不良ばかりで
はパーどころか“OB”になってしまう。
ここで金型を例にすれば、当社にも生産技術課の中に金型係があって、金型の70〜80%を内製
している。社内に金型係を置いて金型を造っているのはなぜか。これにはいろいろな理由がある。
例えば緊急対応だとか、新しい金型技術の研究だとか、金型メンテなどいろいろあるが、私がここ
で言いたいことは、社内製金型と外注製金型とでは次のような点で大きな差があると思うし、また期待している。
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○外注金型メーカは〔金型を〕一個売り上げて何ボかである。
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外注メーカさんは金型を売り上げればお金になる。その金型が使いやすいか、精度を維持しやすいか、
メンテナンス性に問題はないかなど、後工程との関連でベストな設計になっているかどうかはあまり
問題ではありません。もっともこんな考え方の金型屋さんでは先が見えていますし、また付き合わな
い方が良い。
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○社内金型係では〔製品を〕一個売り上げて何ボかを考えてくれ。
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外注のメーカさんと同じ考えで仕事をされたのでは金型係の存在意義がなくなる。良い金型を造るためには
- 製品の設計段階まで逆上って、加工しやすい、組み立てやすい、品質を保証しやすい、ような製造の提案をする。
- シンプルで、耐久性があり、コストが安い、金型を造ること。
- 現場で使い易い、故障しない、不良品がでない金型を造ること。
- このようなKnow-Howを蓄積して、Know-How集を作り、設計段階で活用すること。
金型係の皆さんは、自分たちが金型を造る都合を優先しないで、トータルでものを考え、
“良い製品を、安くて、早く”造るためには、金型をどうすれば良いのかを常に考えたう
えで仕事をするように心掛けること。
もちろんこの考え方は治具や設備でも同じである。