本田宗一郎さん(本田技研創業者)の話のなかでよく、「お前ら、牛の耳は何処についている
か知っているか?」と質問されたことがありました。たいがいの人は頭についていることは漠然
と分かりますが、もっと正確に、角と、目と、耳はどんな関係についているかと言うと、ほと
んどの人は?である。
本田さんは絵を描かれ、大変お上手でしたが、「絵を描くときにはボヤット眺めて描いてい
るようではだめだ、なぜそんな形になっているのか、どんな役目をしているのか、その配置
は……と言うようによく観察して描かないと本当の絵は描けないんだ」、と言われた。これ
はわれわれに“常に問題意識をもて”と言う教えでした。したがって現場を廻られると、いろ
いろなことによく気が付かれ、時にはそれが雷となって落ちることもあった。
本田さんの受け売りではありませんが、仕事の改善や、品質の向上には常に問題意識を持つ
ことが重要である。問題意識のない人は、自分の職場にある問題が、問題であることに気が
つかないので、設備故障や品質トラブルが表面に出てから気が付き大騒ぎとなる。
私が職場を廻ったとき、「調子はどう」と声をかけると、「問題ありません」と何で
もすぐ答える人がいますが、それよりも、「こんな問題があります。こんな良いことがあ
りました。こんなことが予想されますので、このようにしています」と言うような問題
意識をもった答えが帰ってくるほうが私は嬉しい。
昔からよく“体の弱い人ほど長生きをする”という。これは自分の体の具合の悪いところ
(問題点)をよく知っていて(意識)、日頃から注意し、予防処置をするから長生きができ
るということで、逆に“丈夫な人ほどポックリ死ぬ”という例えは、日頃丈夫な人は少しぐ
らい体調が悪くても気にしないで、手当てもしないことが、突然死にいたるということだと
思う。
われわれ企業では“丈夫で長生き”と行きたいものである。そのためには現状に満足せず、
常に問題意識をもって現場を見、気のついたことはどんどん解決するよう心掛けてほしい。
また困難な問題は上司やスタッフの協力を得ることも必要である。