Tech307

技術者の心得 : 実験の進め方に関する10ヵ条(その7)

開発と実験には技術者が必ず通る道がある

西畑三樹男  森川 愼

実験終了試料の整理(論より証拠、実験は繰り返すことが多い)

 精魂込めた開発実験が終了すると、ほっと一息、この時の煙草、お酒の味は技術屋でなけ れば味わうことのできないものであろう。とくに失敗、あきらめ、再度挑戦、繰返し回数の 多いものほど、使用した機械、装置、試料には、愛情をもつものである。

 しかし、成功した結果から新商品ができ、世の中で評価され、その価値が問われるのは、 実験が終了して、早くて一年、長いものでは数年かかるものもある。そこからが技術者の勝負 であり、新たな問題が山積みされてくる。それが研究であり、開発である。

(イ)試料は少なくとも二〜三年は保存する。
 実験は、数多くの組合せにより行うので、その試料数もかなり膨大な量になる。 これをすべて保管するのはむずかしいが、少なくとも、特徴ある形状や、失敗してその理由が まったくわからない試料などは、必ず保管する必要がある。
(ロ)特徴ある試料や、一回しか観察できなかったものは、永久保存する。
 金属材料の破壊に伴う破面などは美しいもので、現在は写真に撮影することが多いが、 錆などが発生しないように真空パックなどを用いて保管しておくと、自分が若いときの 分身のように思えるものである。たとえば、奈良の大仏などは、銅一錫合金で製作されたも ので、今日のICのリードフレーム材と同じような材料で、見方によれば、1000年の大気暴露 試験を行っているようなものである。