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技術者の心得 : 品質管理に関する10ヵ条(その5)

品質管理は自分が日常行っている健康維持と同じである

西畑三樹男  森川 愼

籾の中の粃はすべてを除去できない。

 私は農家出身なので、つい自分だけ理解したつもりでこんな例えをしますがお許し下さい。 籾とか粃とか言っても皆さんは知らないと思いますので少し説明をする。稲の穂についてい る硬い殻を破った実を籾と言う。成育が良ければどの実もきれいに中身が詰まっているが、 成育が悪いと、殻ばかりで中身の少ない萎びた籾になってしまう。この不良の籾を粃と言う 。昔は籾の中からこの粃(不良品)を除去するのに唐箕と言う風を利用した選別機などで手 間をかけて行っていたが、大量の籾の中から粃だけを選別するのは大変手間のかかる仕事で あると同時に、完全に除去することは不可能であった。
 ところで、我々の製造している製品は品質が第一であって、一個たりとも不良品の混入 は許されない。安定して不良品(粃)の混じらない製品を作るには4M(人、方法、機械、 材料)を確実に決めて、しっかりと守って、工程で不良品を作らないことである。
 昔の品質管理では検査をして不良を取り除くと言うやり方であった。ところがこの方法で は、検査をいくら厳重にしても、工程の中に不良がある限り不良品の流出をゼロにする ことはできない。また当然選別費用や、不良コストが高くつく。この方法では、籾の中に混 ざった粃を取り除くのと一緒である。
 品質を守るための皆さんにいろいろな仕事をお願いしたり、やって頂いている。またQC サークルなども活発に行っているが、ここで言っている、工程で不良品を作らないために、 簡単な目で見る管理図として各ラインに設置してある赤ボックス(不良品を入れる赤い箱) をもっと上手に活用してほしい。例えば、職場を巡回するときや、ロットの区切りのときなどに、 少しの時間でも良いから、もっときめ細かく赤ボックスの中の不良品を確認して、素早い対策を とること。不良品がこの箱に入らなくなるまで、くり返しやって、中身がゼロの日が続くように なれば工程が安定した証拠である。不良品があなたの工程の中で作られていなければ、あなたの工 程からは絶対に不良の流出はゼロとなる。この逆に赤ボックスの中に前日の不良品が残っている ようでは、ラインの責任者としてあなたは失格である。