技術者の心得 : 製造技術に関する10ヵ条(その9)

物作りほど魅力と満足度を同時に味わえるものはない

西畑三樹男  森川 愼

自社では使わないが、得意先で使うところは必ず検査工程の中に入れろ

 当社の主要な製品の一つに、コンビネーションスイッチがある。ご存知のよう にステアリングコラムに組付けてあって、ヘッドライトのON、OFFや、ターンシグナ ル、ワイパーコントロールなどを操作するスイッチであるが、このスイッチがステア リングコラムにどのように固定されているのか、またコラムカバーとはどんな関係に なっているかまで知っている人は案外少ない。
 当社としてはコンビネーションスイッチの機能、性能、外観はどんな場合にも検 査工程の中で全数チェックをし、またその機能や使われ方をみんながよく知って いる。ところがコラムに取付ける穴、スリップリングを取付ける穴、コラムカ バーを固定するボスのような、当社では使わない穴や、ネジなどは最終の組立て では検査をしなかったり、使われ方を知っていない人もいる。もちろん部品単体 での保証はキチッとやっているかが、最終組立て状態で相手部品を組付けない部 分は問題があっても見逃されてしまう危険性がある。ところが得意先にとっては この部分が駄目だとスイッチ自体が固定できなかったり、コラムカバーが取付か なくなり大問題となる。
 このような当社では使わないが、得意先で相手部品との組合わせ上で精度の 必要な部分は他の製品でもたくさんある。このような部分でも不良が一件発生 すればトラブル一件でカウントされてしまう。得意先まで流れて初めて不良が 発見され、散々油を搾られたうえで、不良対策書をかかされるようでは困る。
 これからは、今まで以上に当社の製品の使われ方を勉強し、一見不要そうな 穴がなぜ必要なのか、一見不要そうな出張りがなぜ必要なのかを理解し、検査工 程の中に落とし込んで行こう。このとき注意すべき点がある。こうした検査を工 程の中に落とし込むとき、この検査のために特別一工程を追加するようではあなた は落第である。
 工程をよく分析して、
 ナガラ検査…仕事の順序を工夫して仕事をシナガラまた他の検査をシナガラ、 特にこのために手間をかけずに検査をする。
 フールプルーフ…治具や設備を工夫して不具合があれば取付かないとか、通過しないというようなバカ除け。
 自動検査…設備の中に検査をインライン化する。
というような方法を取入れて、手間をかけない、お金のかからない、検査を上手にやってほしい。