Tech302

技術者の心得 : 実験の進め方に関する10ヵ条(その3)

開発と実験には技術者が必ず通る道がある

西畑三樹男  森川 愼

実験試料の作成(少なくとも50%以上の労力をつぎ込む)

 実験を遂行するには、必ず、類似品やモデルとなる実験試料を作らな ければならない。実験は、それぞれの人により、まったく異なるために、 同じものを開発する場合でもやり方は千差万別で、上司によっては早く 成果を求める人や、じっくりと構想ばかりをねっていて、いつ腰をあげ るかわからない人などがいて面白い。

 まず、実験試料の作成には全検討期間の50%以上の労力をつぎ込むことである。 注意しないと試料であると言う安易な考えから手間を省いたものを作ることがあり、 これが、成功、不成功の別れ目になることが多い。

(イ)試料数は実験に必要な量の10倍程度を準備
実験は予測したとおりいかないもので、考えているとおりにならないから、 繰返し実験をやるものである。技術に関する現象は未知なものが多く、簡単に 処理することはできない。実験試料は少なくとも必要量の10倍を作る。
(ロ)同一目的に対し、必ず逆な試料や方法を入れる
例えば、摩耗しない部品を開発しようとするとき、その組合わせ実験などには、 逆に当然摩耗する材料を比較用に入れる。
(ハ)試料の保存方法(経時変化に注意)
実験は一日、24時間連続で行うのは特殊なもので、普通は昼間で、夜間はその ままにして帰ることがある。しかし、金属材料の腐食などは、夜中でも、普通の 環境でも進行し、ときには、暴風雨による塩害などによって赤錆などを発生する こともある。このため試料の保存方法には何時も細心の注意を払わなければならない。